仕事途中、なぜか松本市のアルプス公園に行った。松本城がある中心市街地より200メートルほど標高が高い。そのせいか、赤とんぼがあちこちに飛んでいた。そろそろ里まで下りて来る、ということはもう本格的な秋である。見上げたら、青い空。天気もいいことだし、スカッとした気分になりたくて、夕方に仕事をさぼってロードスターに乗ることにした。
そう考えると、少しうきうきした気分になってくる。いつもはのろのろとはかどらない仕事をさっさと片付けて、無言で仕事場を飛び出し、自宅でジムニーからロードスターに乗り換えて出発した。時間は5時前。
少し激しく乗ろうと、手袋を着け、開幌状態。いつもの山道を駆け上る。スーツの上着はとても滑る。少しアングルを付けて、ぎゅーんを軽くうならせながらコーナーを曲がっていたら、キノコ採りにでもやってきたと思われる人がわきを歩いていた。「いい感じの姿勢だ!」などと思っていたのに、はたから見たら極悪な車。とってもきまりが悪い。
ゴルフ場の出口から、R32スカイラインが下りてくるところだった。フロントグリルの形状からすると、GTRか。バックミラーで付いてきたのを確認。「追ってくるな」と思った。少しアクセルをゆるめていると、案の定。近づいた。自分のペースで走る。
美鈴湖で車を止め、相手が通り過ぎるのを待つ。通り過ぎるR32。少し時間をずらして、走り出す。この先は美ヶ原林道。幅細く、ロードスターには有利な道である。
しばらく走ると、追いついた。すると、後ろに気付いたからなのか、突然の急加速。こちらも相手に圧迫感を与えないぐらいの、一定の車間を開けて付いていく。
遅い。うっかりすると、車間が詰まってしまうので、踏めない。下手にあおったら、ガードレールに突き刺さるかも知れないし、ずっと煮え切らないまま付いていった。峠に出たところで、相手は武石村方面に下っていった。
稜線の道を走り、頂上の駐車場でUターン。山を下り、視界の開けた場所で車を止める。眼下に広がる松本の街の、銀河のようにも見える明かりを見ながら、缶コーヒーを飲む。この瞬間が、幸せ。
山では茶色に染まった葉が盛んに落ちている。もう1週間もたち、雨でも降ればとても走れる状態ではなくなる。だんだんと、走る場所が狭まっていき、降りた霜がなかなか解けなくなれば、今シーズンも終わりである。