10月15日

F1観戦は宿確保が最大の壁だった。

「F1に行こう」と甲府の友人に誘われたのは、今年の夏前ぐらいだったか。チケットの販売状況をホームページで見て、まだ売れ残っていたのを確認し、行くことに決めた。チケットの購入は友人にまかせた。

ところが、9月中旬になっても「まだ買っていない」という。すでに年間優勝が決まっていたので、キャンセルが相次いで、チケット屋での値段が下がると踏んだらしい。友人は1度行ったことがある、と言うし、本当に行けるのかしら、と心配になりながらも、とにかく待っていた。

友人が買ったチケットは入場料9000円と、指定席32000円の計41000円の場所だった。「D」というブロックで、ホームストレートから1コーナーに入る、非常に良い場所だった。しかし、安く買うと言っていたわりには、定価のままの購入であった。

相談の電話が掛かってきたのは、先週のこと。「宿を探したのだけれど、あまりまともなところがない。明日までに入金すれば泊まれる場所が1カ所ある」とのこと。値段を聞くと1人20000円。普段はモーテルらしい場所なのに、だ。さすが国際イベントF1。特に宿泊関係は「F1価格」になってしまう。

41000円の上に2万円も払いたくなかったので、鈴鹿市の隣、亀山市に住んでいる人に電話をしてみた。すると、「何もかまえないけれどOKよ」という返事。やはり持つべきものは心優しき知り合いたちである。

そして、F1出発前の金曜日。快く泊めてくれたお礼を持っていこうと、仕事をさぼって食材を買いに出掛けた。信州ならではのうまいもの、と言えば、きのこ鍋しかあるまい。知り合いに少し分けてもらうようお願いし、さらに松本平中を回ってきのこをかき集める。

松本電鉄上高地線の終点、新島々駅近くのおみやげ屋や、町の観光協会が運営している地場産センターを回り、かき集めた。クリタケ、ヒラタケ、シメジなどなど。さらに、塩尻の知り合いのところへ寄り、僕の中では1番うまいと思うジコボウを分けてもらう。おみやげ屋では、3、4000円で売っているやつを、冷凍だが、大量にもらった。

ジムニーの助手席に積み上げられたきのこたちを見て、1人でほくそ笑んだ。いまだかつて、こんな大量のきのこを鍋にぶち込んだことはない、と。

その日の夜は、友人Kの仕事先での送別会だったので参加する。いったい、いつ仕事をしているのか、自分でも不思議なくらいだ。土曜日は、甲府の友人と午前6時すぎにJR岡谷駅で待ち合わせをしているので、ちびりちびりとやっていた。

いつもと同じようにしこたま飲んでしまって意識不明となり、携帯の振動で目覚めたのが午前6時前。完全に遅刻である。

友人Kが「翌日、朝に東京に帰る」と言っていたのを思い出し、電話でたたき起こして、迎えに来てもらい、岡谷に向かう。岡谷インターに午前6時半すぎ着。甲府の友人のスープラに乗り込み、鈴鹿を目指す。午前11時着。フリー走行は音しか聞こえなかった。予選はシューマッハの走りに興奮する。

夜、9時半ごろ、亀山の知り合いの家に到着。大量のきのこを開けたら、家の人が目を丸くしていた。東海地方ではなかなかお目にかかれるものではない。とにかく、きのこを鍋に全部ぶち込んで、煮込む。本当は、水を入れずに肉を焼き、野菜を投入してから、日本酒を注ぎ込み、野菜から汁が出てきた頃にきのこを加えると、濃厚なスープとなるのだが、この日は昆布だしの中に放り込んだ。5、6種類のきのこが投入された鍋は壮観である。肉は豚肉がうまい。野菜のメインはやはり白菜。それにしょうゆで味付けしただけである。

煮上がったきのこたちの醸し出した味の、なんとうまいことか! 4人では食べきれないかな、と思っていた、ただならぬ量の鍋だったのに、見る見る間に胃袋に収まっていく。具を食べ尽くした頃に、うどんを入れる。きのこだしの汁で煮込んだうどんは、もはや別の食い物である。大量の具を食べた後のうどん3玉も、瞬く間に終了した。

亀山の知り合いも、「これまで食った鍋のなかでも1、2を争うね」と絶賛。きのこのうまさに開眼したようであった。まつたけの味、なんてお金を出してまでのものじゃない。雑きのこのうまさに比べれば。

連日の飲みで体力が消耗していたが、これで回復。