昨日もヘッドの洗浄の続き。吸気ポートのカーボンがいまいちきれいにならないので、WAKOSの剥離剤を吹いて、カーボンを溶かそうと思った。
さすがに、屋内でパーツクリーナーや剥離剤を吹くのはまずいと思い、玄関の外側に段ボールと新聞を敷いて、メタルクリーン溶液から取り出したヘッドの吸気ポートに剥離剤を吹く。暗いので、照明を付けた。夜中に玄関前を怪しく照明して、なにやら作業をしているので、隣近所は不審に思ったに違いない。
スプレーの出が悪い。外は零度近いのでスプレーのガス圧が弱くなってしまうからか。
足はサンダル履きだし、寒かったので、玄関においてあるストーブを表に出して火を付け、スプレー缶をしばらく温める。手で触っても冷たくない程度に温めて吹いたら、勢いよく剥離剤が飛び出してきた。吸気ポートにこびりついたカーボンがどろどろと浮き上がって燃焼室側に流れ出す。なかなか強力である。
ところが、この剥離剤を落とすのがまた大変な作業なのだ。どろどろとした粘液なので、パーツクリーナーの一吹きではなかなか落ちない。念入りに、シューシューと吹きまくる。ポートに指を突っ込んで、こすりながらパーツクリーナーをスプレーする。気化熱を奪われ、指はとっても冷たい。パーツクリーナー自体も吹いているうちに缶が冷えて出が悪くなるので、ストーブで温めながら作業する。
しゅしゅしゅっとしつこく吹く。しゅしゅしゅしゅっと吹きまくる。剥離剤は燃焼室側に流れ出し排気ポートに侵入して、なんだか最初より汚くなってしまった感じ。しゅしゅしゅっと吹く。中腰になって地面においてあるヘッドに吹いて吹いて吹きまくる………。
背後においてあるストーブからぽぽっと音がした。次の瞬間…、、、
ぽぽっ
ばん、ぼわーわわわっ
ばん、ぼわーわわわっ
と、足下が青い光で包まれた! 足を包むように熱気が立ち上ってくる! 次の瞬間、目の前が真っ赤になり、「あぢぇ」という訳の分からない言葉をはき出しながらジャンプして体にまつわりついてきた炎から逃れる。サンダルがどこかへ吹っ飛んだ。
青い光で包まれた青い光熱気真っ赤あぢぇ炎
新聞紙にしみこんだパーツクリーナーが勢いよく燃えて、ヘッドを包み込むように1メートルぐらいの火柱が上がっている。ヘッドが火を噴いているみたいできれいだな、と訳の分からないことを考えながら呆然としていると、今度は黒い煙が立ち上り始めた。同時にものが焼ける嫌なにおいも立ち上る。
いかん、玄関が燃えてしまうとわれに返り、まずストーブを消す。慌てて手を離したパーツクリーナーの缶も炎のすぐ隣にある。剥離剤の缶とともに、火から引き離す。周りにあるプラスチック類もとりあえずわきにどける。
すでに、火は新聞紙と段ボールに広がり、なかなかの勢いで燃えていた。とりあえず、しばらく炎に包まれるヘッドを眺めていた。なかなかいい絵だ。
待っていても火は消えそうにない。ふと炎の魅力に奪われかけた心を取り戻し、まず水だ、と、バケツに水をくんできてぶっかけてようやく火は消えた。
白く水蒸気を上げるヘッドを眺めながら、嗅覚を直撃するのは火事場そのもののにおいだ。松本で何回か火事現場に行ったときのことが懐かしく思い出される。すべてのものが燃え尽くした火事場に行ったとき、無力感とともに嫌というほどかがされたにおい。
屋外だったら爆発はしないと思っていたのだが、ちょっと火との距離が近すぎたみたい。さすがに、「玄関でたき火しちゃった!」などと家族をごまかすこともできそうにないので、ゴミ袋を持ってきて燃えた新聞や段ボール、ちらばった真っ黒な灰をかき集めて、ちゃちゃっと証拠隠滅を図る。玄関先で爆発したことを知られたら、エンジンを捨てられちゃうかもしれない。
着ていたセーターには火事場のにおいがこびりついて、いつまでたっても火事場臭がただよう。風呂に入っても火事場臭がするのは、髪の毛に染みついたからか。湯船につかっていると、焦げてちりぢりになった髪の毛がお湯に浮かんでいて驚いた。どうも、瞬間的に炎に包まれたみたい。
炎に包まれるヘッドをデジカメで撮っておけば良かった。