1月4日

 雪なし県生まれの僕は、スキーと言えば完全なレジャーで、スキーブームに便乗して親戚に道具をそろえてもらって、小中学、高校生時代に何シーズンかやったぐらい。大学時代にも1度、兄貴のランドクルーザー60を借りて友達と蓼科に行った覚えがある。が、このときはバイク事故で左足を骨折した後で、ちょうど折ったすねの部分に靴が当たるのはちょっと違和感があって、簡単に滑って終わり、以来、滑ったことはなかった。スキー天国の信州に4年も暮らしていても1度もスキーに行ったことはない(スーツ姿で白馬のゲレンデに出没したことはある)ぐらい。

スーツ姿で白馬のゲレンデに出没したことはある

 ボーゲンしかできない僕のスキーの思い出といえば、板の取り回しに四苦八苦し、パラレルのまねごとをしようとすれば足先がもつれて転がる。それでも気合いを入れて滑ると、スピードが付きすぎて怖くなり、腰が引けてさらにスピードが上がって体が置いて行かれて制御不能の直滑降となり、きゃあああぁぁ、と声を出しながら超高速で横に倒れるしかなく、派手な雪煙を挙げながら雪の中を転がって、外れた板を探しに行く、といったネガティブなものばかり。スキー場は遠いし、怖いし、道具は重いし、実は全身運動だし、というスパルタさを薄々と感じていて、今回、誘われても正直、どうしようかなあ、という感じだった。

 スキー場隣の民宿で借りたスキー板は、短くて幅広で先端がしゃもじみたいな形。身長よりちょっと長いぐらいが目安で、ほとんど真っ直ぐで、先が尖ったかつてのスキー板とは違う。道具が変わったことすら知らないぐらい、縁遠い世界になっていた。

 で、雪国育ちの保護者に引きずられるようにしてリフトに乗り、頂上から見下ろした斜面はそれほど急じゃないのだろうけれども、けっこう急に見えた。それでも、立ちつくしているわけにもいかないから、えいっと滑り出す。

 とりあえず、ハの字にしていれば大丈夫だろう、と滑り出したらその通りで、意外にもコントロール可能だった。スピードもぐんぐん付いていくって感じじゃなくて、コントロールできる感じ。えいっと斜面の方向に傾けば、ざざっと止まることができる。おお、けっこうできるじゃないか。

 スキーと言えば、ちょっと足が取られたり、固い雪ですっぽ抜けたりして、どかんと転倒するイメージがあったのだが、なかなか転ばない。ぐらりとバランスを崩して、後傾姿勢になり、うわっ、暴走の始まりだ、と一瞬ヒヤリとするのだけれど、ぐいっと体勢を直して復帰できる。何回か転ぶんだけれども、以前のように全身を雪にたたきつけられる感じじゃなくて、スライディング気味に安全に転ぶ感じ。

 なんだこの違いは、と相変わらずボーゲンなんだけれども、けっこう楽しい。急傾斜でなければ、怖さは一切なくて、うまい人がどうやって足をそろえて滑っているのかを観察したり、右後ろ側から突然飛んでくるスノーボーダーに注意を払ったりする余裕もあった。

 保護者は、斜面に向かうように前傾して、体は前を向いたままで、下半身だけ右に左にやる感じで、という。意識してそんな感じで滑ってみるのだけれども、まだまだ棒立ちで全身が左右にうろうろして、板はハの字でって感じだったと思う。

 それでも、すいすい行かないまでもコントロールできて、何とか続けていけばレベルアップしていけるんじゃないかしら、という感じは受けた。湯沢は雪が降り続いていて、コースの脇は新雪が深い感じだけれど、全体的にコンディションは良い感じ。人間は変わってないし、コースのコンディションだけとも思えないから、違いは板なんだろうなあ。真っ直ぐは速いけれど、どアンダーで止まらない直線番長FF車から、すいすい曲がって止まるロードスターに乗り換えた感覚。どちらも極めれば同じなんだろうけれどね。

 次も滑ってみようかな、と思う体験でした。