使ったことはないが…
「12 エコノ補正」と「13 噴射量計算式」。どっちも使ったことはないばかりか、噴射量計算式はほとんど使われることがないはずだが、ついでだから書いちゃおう。
●エコノ補正
エコノ補正は、リニア式の空燃比計がない場合にだけ使う補正だから、最初から空燃比計連動機能を使っていた僕はまったく使ったことがない。どんな補正なのかピントこなかったのだが、どうやらこういうことらしい。
もともと、噴射量マップは、その回転、吸気圧での充填効率を入力するものだ。 噴射量マップで入力した充填効率に吸気温補正や水温補正をはじめとした各種補正を掛け合わせて、理論空燃比となる噴射時間を算出する、というのが基本なのである 。
裏を返せば、 噴射量マップは、どの回転数、吸気圧でも理論空燃比になる数値(=充填効率)を入力するのが本来の姿である 。
どの補正も理論空燃比を維持しようと狙う補正だが、 2つ例外がある。出力増量補正とエコノ補正だ 。出力増量補正は、馬力は理論空燃比よりも少し濃い方が出るため、スロットルがある一定以上踏まれたときに、一律に1.180を掛けて、14.7の理論空燃比を12.5の出力空燃比になるよう燃料を増量する。
エコノ補正は、負荷があまりかかっていないとき、理論空燃比よりも薄い空燃比(18.5ぐらいまで)にして、燃費を稼ぐための補正だ。
いずれも、スロットル開度を基準にするため、開度が分からないNA6CEのスイッチ式では使えない。が、 実は、この2つの補正は、なくても差し支えないのである 。
というのは、シングルスロットルであれば、吸気圧とスロットル開度は比例関係にあるので、 出力増量補正を使わなくても、700mmHg以上の高負荷の噴射量マップ領域には、あらかじめ1.180倍した数値を入力してしまえば良いのである 。逆に200〜500mmHgの低負荷のマップ領域には、薄目の数値を入力してしまえばよい。O2センサーの信号を基に全域14.7の空燃比となる噴射量マップを作っておき、領域によって好みに応じて濃くしたり、薄くしたりすればOKなのだ。
かつて、空燃比計連動機能がなかった時代、Freedomの学習はノーマルのO2センサーの信号を基にするしかなかった。ノーマルのO2センサーは理論空燃比である14.7より「リッチ(濃い)」か「リーン(薄い)」かしか分からない。噴射量マップは全域14.7の理論空燃比になるマップを作るしかなかった。
が、今はリニア式の空燃比計がある。高負荷の領域は12.5の空燃比、高回転はちょっと怖いから12ぐらいになるように、逆手に低負荷なら16〜18ぐらいの薄さになるよう、噴射量マップを学習させることだって可能である。 こうなると、ますます出力増量補正とエコノ補正の出番はなくなる 。
実際、空燃比連動機能に必要な空燃比マップは、エコノ補正マップと同じ領域のメモリーを使うことになっており、共存できない。連動機能を生かした時点でエコノ補正を殺すようになっているのだ。使わなくても良い補正なのである。
以上のことを前提に、エコノ補正でどんなことをやっているのか書いてしまおう。エコノ補正を使うのは、「エコノゾーンの指定」と「エコノ補正マップの書き換え」の2段階が必要となる。
回転数
|
吸気圧
|
|
エコノゾーン1
|
100
|
200
|
エコノゾーン2
|
100
|
700
|
エコノゾーン3
|
200
|
200
|
エコノゾーン4
|
200
|
700
|
エコノゾーンは、理論空燃比より薄い空燃比で燃やしたい状態を、回転数と吸気圧で指定する。
エコノゾーンは4つのポイントで指定する。デフォルト値は右の表の通り。回転数にあり得ない数値が入っていることからも分かるように、デフォルトではエコノ補正は働いていないことが分かる。
表でエコノゾーンがだいたい分かると思う。
噴射量マップ上の4つのポイントで囲まれる領域が「エコノゾーン」。推奨値は下記の通りである。
回転数
|
吸気圧
|
|
エコノゾーン1
|
2000
|
200
|
エコノゾーン2
|
2000
|
700
|
エコノゾーン3
|
5000
|
200
|
エコノゾーン4
|
4000
|
700
|
そして「エコノ補正マップ」を書き換えて、領域によってどれだけ薄くするかを指定する。デフォルトでは下ようなマップになっている。
○
エコノ補正遅延時間
エコノモードに入る条件は、運転条件がエコノゾーンに入っていることと、空燃比フィードバックが行われていて、補正係数が0.98〜1.02にあること。というのは、噴射量マップが大きくずれているのにエコノモードに入ってエンジンが不調にならないよう防ぐ必要があるためである。ここでは、この条件が何秒間満たされたらエコノモードに入るかを「秒」で設定する。デフォルトは5.0。
○
エコノ補正減少割合
エコノモードに入ったときの補正係数の減少割合。エコノモードに入る前のフィードバック補正係数からこの値ずつ減少させ、エコノ補正マップで指定された値まで空燃比を薄くする。割合を大きくすぎると、エコノモードに入るときにショックが発生する場合があるので、0.005〜0.020までの範囲で指定する。デフォルトは0.020。
○
エコノ補正Kf下限値
上で書いたように、エコノモードに入るときに空燃比フィードバック補正がある範囲に入っている必要がある。ここでは下限値を指定する。デフォルトは0.980
○
エコノ補正Kf上限値
上限値を指定する。デフォルトは1.020。
●噴射量計算式
「1 基本パラメーター」→「13 噴射量マップ使用フラグ」で「1次式」を選んだときに、吸気圧Pと充填効率Yの関係式、Y=a×P−bの、各回転数ごとのa(ゲイン)とb(切片)を入力する場所。
マップを使いましょう。よって変更は不要
。いちおう、デフォルトは下の通り。
回転数
|
ゲイン
|
切片
|
1000rpm以下
|
0.745
|
0.035
|
1500rpm以下
|
0.777
|
0.037
|
2000rpm以下
|
0.830
|
0.039
|
2500rpm以下
|
0.841
|
0.040 |
3000rpm以下
|
0.841
|
0.040
|
3500rpm以下
|
0.830
|
0.039
|
4000rpm以下
|
0.809
|
0.038
|
4500rpm以下
|
0.798
|
0.038
|
5000rpm以下
|
0.798
|
0.038
|
5500rpm以下
|
0.819
|
0.039
|
6000rpm以下
|
0.841
|
0.040
|
6500rpm以下
|
0.851
|
0.040
|
7000rpm以下
|
0.851
|
0.040
|
7500rpm以下
|
0.841
|
0.040
|
8000rpm以下
|
0.819
|
0.039
|
8500rpm以下
|
0.787
|
0.037
|
9000rpm以下
|
0.745
|
0.035
|
9000rpm以上
|
0.702
|
0.033
|