製造中止?
今回の腰下チューニングでかき集めた部品たち。特別なことをしているわけはないのに、これだけ膨大な量に上る。全部きちんと組むことができるのかしら。
腰下をオーバーホールするにあたり、ガスケットやメタル類など、必要になる部品を一括注文した。ついでに、12万キロ以上走行しているクラッチの交換と、フライホイールの軽量化をするのだ。ピストンはファミリアE-BG6Pに搭載されたB6エンジンのピストンを選択。 マツダのページ を参照すると、このB6エンジンは圧縮比10.0。もちろん、ガソリンはハイオク指定となる。最高出力は130馬力@7000回転、最大トルクは14.0kg-m@5500回転らしい。
ロードスターに搭載されたB6-ZE型が圧縮比9.4でレギュラー指定。最高出力が120馬力@6500回転、最大トルクは14.0kg-m@5500回転だ。最大トルクと発生する回転数が同じだがファミリアの方が10馬力多い。高回転の伸びがある感じなのか。
この圧縮比の差はピストンの違いのみ。だから、このファミリアピストンを使うだけで、圧縮比を0.6高くすることができる。1mm面研と組み合わせると、だいたい10.7~10.9くらいになる計算。しかも、1mm面研ならば、バルブリセス加工(ピストンとバルブが当たらないようにピストン側を削ること)も必要がないらしい。このくらいなら、ノーマルのガスケットやカムシャフト、ロムチューンで対応できると思われる。コストを抑えたチューニングとしては最適のピストンと言える。
そして、注文したパーツの一覧が、以下の通り。
パーツ名
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数量/単価
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部品代
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ピストンセット |
4 × 4220
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16880円
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ピストンリングセット |
1
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9860円
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バルブシール |
16 × 370
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5920円
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シリンダーヘッドガスケット |
1
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4540円
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インレットマニホールド・ガスケット |
1
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520円
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クランクシャフトオイルシール |
520
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520円
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クランクシャフトリアオイルシール |
1
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1650円
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オイルパンガスケット(B6F4-10-427) |
860
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860円
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オイルパンガスケット(B6F4-10-428) |
860
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860円
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エグゾーストマニホールド・ガスケット |
1
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800円
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カムシャフトオイルシール |
2× 590
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1080円
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ガスケットオイルポンプ
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500
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500円
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コンロッドメタルセット |
4450
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4450円
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メインベアリングセット |
9520
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9520円
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タイミングベルト |
5000
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5000円
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スラストメタルセット |
2180
|
2180円
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タイミングベルトテンショナー |
4910
|
4910円
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タイミングベルトアイドラー |
4230
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4230円
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ガスケットオイルストレーナー |
100
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100円
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ガスケットオイルジェット
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100×8
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800円
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Oリングウォーターアウトレット |
100
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100円
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クランクアングルセンサーOリング |
150
|
150円
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オイルポンププランジャコントロール |
230
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230円
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オイルポンププランジャスプリング |
150
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150円
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ウオーターポンプガスケット(B621-15-165) |
500
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500円
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ウオーターポンプガスケット(B621-15-116A) | ||
クラッチカバー |
7300
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7300円
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クラッチディスク |
5800
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5800円
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クラッチレリーズベアリング |
3100
|
3100円
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パイロットベアリング
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760
|
760円
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チェンジレバーダストブーツ |
1070
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1070円
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チェンジブッシュセット |
390
|
390円
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ウオーターホース(アッパーホース) |
1010
|
1010円
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ウオーターホース |
1160
|
1160円
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ウオーターホース |
950
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950円
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ヒーターホースNo1 |
630
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630円
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ヒーターホースNo2 |
630
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630円
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ORCフライホイール(3.7kg) |
40000
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40000円
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合計
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139110円
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ものすごい表となってしまった。表に書いてある値段は参考程度。実際は買ったお店で割引をしてもらっているから、ずれがある。ウオーターポンプ(11000円)は再使用する。50000キロちょっとしか使用していないものだから、問題あるまい。しかし、クラッチ関係を除いても、8万円近くはかかっている計算。チューニングを伴わないオーバーホールはコスト的に割に合わない気がする。新品のエンジンだって40万円ぐらいで買えるので、もしお店でやってもらう場合、工賃を考えると、新品エンジンやリビルドエンジンを載せてもそれほどコスト的な差がない。
部品を取りにお店に行き、今回のチューニングの目玉であるピストンをまず見る。「MAZDA」という青いアルファベットがごてごてと書かれた箱を開けると、なぜか見慣れたピストントップがお目見えした。あれれ、これはロードスターのノーマルピストンでは…、としばらく思考が停止する。箱の品番で確認すると、間違いなくロードスターのピストンである。出荷間違いかな、と思っていたら、お店の人曰く「そう言えば、ピストンだけ、品番が新しくなったと言ってきたな」という。電子化されたパーツリストで該当するファミリアのピストンを検索してみても、ロードスターのピストンの品番が表示される。
「もしかして製造中止になったのでは…」
不吉な考えが頭をよぎる。純正流用のお気楽チューンで立てていた計画が、がらがらと音を立てて崩れていく。フェスティバのピストンが使えるという話を聞くが、ピストンピンを入れる方式が違うため、溝を掘る加工をしなくてはならないし、バルブリセス加工も必須となる。加工をすると、社外品のピストンを使うのとあまり変わらないコストがかかってしまうと言われた。なにより、リセス加工をきちんとする自信がない。
フェスティバのピストン。ノーマルとは思えないほどの盛り上がりがある。しかし、高回転キープでブローしたという情報も。
すると、やはり戸田レーシングのピストンか? 戸田のB6エンジン用ハイコンプ鍛造ピストンキットは88000円。さらに、ノーマルボアがφ78mmなのに対し、戸田のピストンはφ81.00mmの1722cc仕様。シリンダーのボーリングが必須となる。1万円が4カ所で4万円。これを組むと圧縮比が11.0となる。僕のヘッドは1mm面研がしてあるので、12.0近くまで上がってしまうことになる。すると、ノーマルカムシャフトでは対応が不可能。264度あたりの作用角でも、もしかするとノッキングが出てしまうかも知れないから、272度や288度のカムシャフトにしてしまうとして、1本36000円が2本で72000円。大作用角カムに変えてしまうとHLAは捨てなければならないから、インナーシムに変える。するとキット価格85000円。さらにシムを数種類買い足すとしてプラスαの値段がかかる。
ガスケットもメタルにする。16000円。さらに大作用角のカムを付けると、吸排気バルブが同時に開くオーバーラップの状態が長くなり、吹き返し増加するためシングルスロットルではアイドリングが苦しくなるとみられるから、4連スロットル化決定。 E&Eシステム のフルコン・フリーダム付き4連スロットルキットが165000円。さらにAE101のスロットルやISCV、バキュームセンサーも集めなければならない。フリーダムの制御ソフトは18000円。160馬力は確実だが、エアクリーナーやその他の細々としたパーツを合わせて、60万コースか…。
分解したロードスターのピストン。中心部はくぼんでいる。
疾風のように、細々とした計算が一瞬にして頭の中を駆けめぐった(うそ)。これは極端な例にしても、ピストンがない、というのは致命的である。焦った。
元マツダスピードスポーツファクトリー店長によると、フェスティバピストンを組むには、ピストンピンの溝の加工が必要。1個2カ所×4で8カ所の加工は1万円も行かないと言う。これなら、問題ないかな、と思うものの、問題は圧縮比とバルブリセス加工。 ユーノス・ロードスターチューニングバイブル という本によると、このピストンを組み込んだだけで圧縮比が10.6~10.7になるらしい。1mm面研で11.5以上となる。カムさえ変えてしまえば、なんとか許容できる範囲の気がするが、バルブリセス加工が不安。さらに本によると、高回転(8500回転)キープでブローしたという。原因は、推測にすぎないけれど、頭の部分が重いため、首振りを起こして、ピストントップとシリンダーヘッドがぶつかったのではないか、とのこと。あまり気が進まない。
これがファミリアピストン。ロードスターのピストンではくぼんでいた中心部が、逆に盛り上がっている。
この本には、ファミリアピストンによるハイコンプチューンも紹介されていた。丁寧に、ピストンの部品番号(B6Z4-11-SA0)まで記載されている。この前に注文したときの番号と違う気がした。ダメで元々、本を持って、ディーラーに向かう。部品発注の端末に部品番号を入力すると、何と、出てきた! 広島に在庫が18個、と書いてある。念のため、車の形式名から検索してみたが、どうやら欲しいピストンに違いないらしい。すぐ注文した。
届いたピストンの箱を開けてみて、ピストントップの形状を確認すると、まぎれもなく、本に出ていた形である。ロードスター用の中央がくぼんでいるのとは逆に、このピストンは出っ張っている。2本の溝が掘ってあるバルブリセスの切り方にも特徴がある。
ホッと胸をなで下ろす。これで予定通りの作業ができる。
一時はどうなるかと思った。